ユキさんの妄想シチュエーション

 
"妄想シチュエーション"とは、恋に憧れる仮想マネージャーのユキさんが推しメンとの理想のシチュエーションに溺れるコーナーです。


三野 銀司 の場合
 

 
 
わたしの彼は完璧すぎる。
 
かっこいいし、優しいし、大人だし。
 
運動だってできるし、頭もいいし、その上SEXY。
 
Mr.パーフェクト。

年上の彼ということもあるのか、その余裕にいつもわたしはドキドキさせられっぱなし。
 
誰か止めて、わたしのロマンティック、止まらないけど。
 

そんな彼と今日は京都でデート。

まずは神社でお参り。
 


 
え…えに…絵になりすぎる…!!
神様もびっくり、かっこよさ神レベル。
 
この人わたしの彼氏です!!かっこいいです!!
 
大声で叫びたい衝動をグッと堪え、彼に見惚れる。
 
手水の作法まで完璧だなんて…。
 
わたし前世でどれだけ徳を積んだのかしら。積んだ徳を彼と付き合うことに対してフル活用したみたい。
 
神様、どうかこのハッピーが一生続きますように…いつも彼のことを見ていられますように…生まれ変わったら彼の(自主規制)に…
 
強めのお祈りをした後、辺りを散策。
 
 

小腹が空いたので甘いものを食べることに。

「俺注文してくるから、座ってて。」

ジェントルオブザイヤー受賞。

彼の優しさを噛みしめながらにやにやしていると、不意に肩を叩かれた。
 
振り返ると、高校が同じだった男子がいた。久しぶりの再会。
 
軽く話したが、彼女と待ち合わせがあるらしく、わたしの頭を軽く小突いて、一瞬でどこかへ行ってしまった。くそ、彼氏自慢はできず。
 
 
同級生が去ってすぐ、彼がパフェを持って戻ってきた。

「今の誰?」

高校の同級生だと答えると彼は眉を潜める。

「なんか…仲良さそうやったね。」

いつも通りの声で話しているけど、様子がおかしい。
…?これは…??

「だって、すごく嬉しそうやったから…。頭触られてたし…。」

わざとらしくそらした目と、少し尖らせた唇は世界を滅ぼすのも容易い、かわいすぎる。
 
年上彼氏のまさかのジェラシー、ギャップ満点。

嫉妬してるの?とたまらず顔を覗き込むと



「うるさい、見るなよ!!」
 
照れ隠しなのかパフェを食べさせようとしてくる。
 
年上彼氏とパフェの絵面、あざとさ満点。
 
今までこんな姿見たことない。
ただの完璧じゃなくて、嫉妬のできる完璧…!余裕があるはずの人の嫉妬…!!
 
これだけでごはんおかわりできる。
 
意外と嫉妬しい(かわいい)、彼の新たな一面として登録しておこう。
 
 
平静を装ってパフェをばくばく食べる彼に再び目を向けると、口にクリームがついている。
 
それ見て思ったのは、あぁクリームになりたい、ただそれだけだった。
 
 


津田 真之介 の場合 
 
 
 

「あの時言えなかったけど、ずっと好きだった。」

目の前の彼が照れくさそうに言ってくれた言葉。
 
きれいなままでとっておいた初めての気持ちに変化が訪れる予感がした。
 

彼と仲良くなったのは中学三年生の秋、席替えで初めて席が隣になった時だった。
 
静かでいい子そうだなというのが彼に対する印象。
 
実際、彼との時間は穏やかで心地よく、読書という共通の趣味も相まって、仲良くなるのに時間はかからなかった。
 
あまりの心地よさに月に一回の席替えが、少し憂鬱になるほどだった。
 
 
そんなある日の休み時間、お前ら付き合ってんの?にやにやしながら大声で聞いてくる男子。
 
誰が付き合ってるとか、誰が好きとかそういうことをからかいたい年ごろ、クラスはざわめく。
 
わたしは恥ずかしくて、うつむいて、違うと言うことしかできなくて。
 
同時に怒っているみたいな声で、うるせーよ、ちげーよと言っている彼がどんな顔をしているのか気になって仕方がなかった。
 
 
それ以降、彼とは気まずくなった。
 
彼はわたしと目を合わさなくなったし、卒業するまで口を利くこともなかった。
 
わたしもまた、卒業式の日にアルバムの後ろにみんなからメッセージを書いてもらったが、彼にだけは書いてってお願いできなかった。
 
 
初恋だった。

彼とのあの穏やかな時間を思い出すたびに、きゅうとどこか締め付けられて、なんとも甘ったるいものがにじむのを感じた。
 
 
だから、2回生になって大学のキャンパス内で本読む彼の姿を見た時、驚き、懐かしさ、嬉しさ、切なさ、感情が一気に押し寄せて息をするのを忘れた。


 
 
久しぶりに会う彼は、背も高くなり大人びていたけれど、さらさらの髪、すっきりとした瞳は当時のまま。
 
本を読んでいる姿が、学ランの中学時代と重なる。
 
声をかけずにはいられなかった。
彼ははじめ驚いた顔をしていたが、すぐに穏やかな笑顔で答えてくれた。
 
「久しぶり。」
 
彼の口ぶりは、全然久しぶりな気がしなくて、大学生となった今は逆に新鮮だった。
 
覚えていてくれたんだ。
 
あの頃と同じように、彼と話すのは心地よくて、そのあとすぐ会う約束をした。

それ以来、彼とよく会う仲になった。
 


彼を初恋の人から、男友達と認識し直し始めた頃のこと。
 
中学の頃の話をしている途中、彼が聞いた。
 

「あのときあいつが俺らのことからかってきたの覚えてる?」
 

もちろん覚えているし、よそよそしくなってしまった当時の二人が青すぎて笑ってしまう。
 
そんなこともあったねと相槌を打つと彼は続けた。

「俺、子どもだったから…、あの時言えなかったけど、ずっと好きだった。」

金木犀の香りの混じる少し冷たい風が頬をなぜる。
 
彼と仲良くなったあの頃も、同じ風が教室の窓から入ってきていたのを思い出す。

きれいなままのあの頃の気持ち、大切にしまっておきたい気もするが、成長させたらどうなっていたのかとも思う。

男友達だと思いつつある彼なのに、感じたのは男友達に感じるそれではなかった。

はにかむ彼を見ながら、わたしは小さくうなずいていた。
 
 
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